どのくらい走ったのか。

見覚えのある白いアパートが目に入って足を止める。


アパートの前には引っ越し業者のトラックが停車していて、それは彼女のものだと思った。
もう運び出しが終わったのか運転席に人が乗り込むのが見える。


ーーそして、彼女がいた。


走り出すトラックを見送っているのを見て、まだ間に合ったのだと安堵する。


日頃の運動不足のせいで体力低下は否めない。

息切れが尋常ではないけれど、思いきって声を上げた。



「っ……椿さん!」



彼女が反応する。



「右京君?」



再びアパートの中に入ろうとしていた足を止めて振り返った彼女は驚いているようだ。