禍津姫戦記

 両手で顔を覆ってよろめいた。ずきずきと打つ鼓動と重なって、耳元で恨みをしたたらせたヤギラの声がささやいた。

『おまえのせいだ。厄災が降りかかるのを予知できなかった。
 村が湖に沈むのを食いとめられなかった。
 禍と死の影を引き連れてきた。
 おまえさえカツラギに来なければ。おまえさえいなければ——』