姫夜―― 
 暗い坂道のかなたから、かすかに呼ばう声がする。
 姫夜は首にかけている紅玉を握りしめる。紅玉が心の臓そのもののように震えている。
 暗い坂道を、姫夜はわきめもふらず、歩き出した。
 この先に兄がいる。