伊夜彦ヲワガ手ニ捕ラマエタゾ。
 あの名を聞いたときの姫夜の顔。

(次の満月――おまえは行ってしまうのか)

 疵は燃えるように熱かったが、からだは小刻みに震えていた。
 ハバキは、ぐったりと横たわっている姫夜の肩を抱き寄せ、くちびるから息が通っているのをたしかめると、ごろりと横になって目を閉じた。