禍津姫戦記

ハバキはしつらえてある仕度を見わたした。

「酒が足りぬ。浴びるほど飲んでやるからもっと持ってこい」

「ただいま」

 ヤギラは見るからに生き生きとして、厨にとんでいった。
 ハバキは姫夜に、自分のよりも一回り大きな瑠璃の杯をわたした。
 その杯に壺からなみなみと注ぐと、姫夜は白いのどをのけぞらせて一気にのみほした。くちびるからこぼれた酒が、のどを伝い落ちる。