禍津姫戦記

(兄さまは……兄上はどうなったのか。一人で戻られて、もしやあのまま……)

 全身の血が凍りつき、姫夜はくちびるを噛んでうなだれた。その場にくずおれて泣き出してしまいたかったが、紅玉を握りしめ、どうにか必死におのれを保っていた。

(まことに兄上は、生きておいでなのだろうか。……兄上)

 ことばを失った姫夜を見て、ハバキは顔をしかめた。自分のいったことが図星だったとわかったのだ。
 ハバキは無造作に手をさしだした。

「悪いようにはせぬ。来い」