禍津姫戦記

「やはり夜更けを待たねばならぬか……」

 もう夏とはいえ、山の上の空気は冷たい。
 森といっても木はまばらで見通しもよく、だれかが潜むところもないので、いくらかほっとし、火を焚くことにした。
 二人で粗朶(そだ)を集め、火を焚きつけた。雨上がりのこととて、火はなかなかつかず、ハバキは火打ち石を放り出した。