禍津姫戦記

 ――そなたは吾が滅ぼした水ノ江の若者を、救うたな。
 姫夜は全身に緊張を漂わせ、まっすぐに蛇をみつめてこたえた。

「たしかに救うた。呪詛をわが身に引き受けることは、覚悟の上だ」

 ああするより仕方なかったのだ。ハバキは我知らず、円の外から赤い蛇に挑むように叫んでいた。