禍津姫戦記

 姫夜は昂然と顔を上げ、その神にむかって叫んだ。

「いにしえよりこの地を守りたもうてきた古き神よ、鎮まりたまえ。わが願いを聞きとどけたまえ――」

 蛇神はかっと赤い口を開き、牙をむきだして硫黄の臭いのする息を吐きかけた。
 先の二つに裂けた長い舌がちろちろと姫夜の体をなぶる。