禍津姫戦記

「遅い? それはどういうことだ」

 男はハバキの放っている殺気に動じる様子もなく、ひくひくと笑った。
 姫夜が身をよじって叫んだ。

「ハバキ、やめさせてくれ! あの岩に手を触れてはならぬ。あの岩はこの地を守っているのだ。動かしたりすれば怖ろしいことが……」