禍津姫戦記

 ――……西の女王はこなたらを探しておるぞ。

 異形の神の声に姫夜ははっとなった。

「今何と云った。兄が生きているのか! どこだ、どこにいる」

 だがいらえはなく、ふたたびゆらゆらと揺れ、うめきだした。

 ――オオ……このままではわれは漆黒の霧となり果て、未来永劫、荒れ野をさまよい這わねばならぬ……行きとうない……ナイ――

 影はもだえ、よじれ、向こうが透けて見えるほどにうすれ始めた。