その夜更け。
 姫夜は深い眠りから引き戻され、闇のなかで眼を開いた。頭の痛みは薄らいでいたが、そのぶん芯が痺れたようにぼんやりと霞んでいる。

 ――ヤ……ヒメヤ

 低く、囁くような《声》が館の外から姫夜を呼んでいる。
 姫夜は床のうえに起きあがり、ふわりと立ちあがると、白い夜着のまま明かりも持たずに外へ出た。