「命さえあれば必ず、ふたたびあいまみえる日がくる」

 小高い丘の上にある、巨石を組み合わせた石の室(むろ)の前で、二人はしかと抱き合った。おのれの背丈ほどもある長い黒髪が激しい風にほどけて乱れ、なびいている。
双子かと思う程よく似通った美しい貌は青ざめ、赤い飾りひものついた白絹の衣はあちこち裂けて、手首に巻いた珠だけがさえざえと光っている。

 もうもうと黒い煙が流れてきた。宮が炎上しているのだ。

 姫夜は瞳を元きたほうへむけた。
 炎は先刻よりもさらに大きくなり、館の上の空を真っ赤に焦がしている。
 姫夜の心の目に、壮麗な彫刻がきざまれた朱塗りの宮の柱が、屋根が、住みなれた館の壁が、金色の火の粉を散らしながら崩れていくのが見えた。