「何がいけなかったのか、自分でもわかんない」 さっきのはなんだったんだってくらい、里麻はしゅんと静かになった。 出会った頃から、里麻は泣きたいときに泣く人だったことを思い出す。 もともと小さい体をもっと小さくして、両手を膝の上にのせる里麻は、うつむきながら口を開けた。 「昨日ね、一緒に帰ってたの。そしたら、前に伊月くんが歩いてて」 『伊月くん』 里麻が口にした言葉が頭にこだました。 ついさっきまで、フルネームで呼んでたのに。