「あの日、この空の下で俺ら、出会ったんだよな」 「そうだね」 「あのとき、屋上にいてくれてありがとな」 「ううん」と首を振りながら、私はしゃがんでトランペットケースを開ける。 空の青色が、銀色のトランペットにうつる。 「俺の夢、きいてもらっていい?」 「うん」 「俺、音楽はやめないつもり」 思わず、伊月の顔を見てしまった。 だって伊月はもう――― 「もう俺にはほとんど聴力はないけど。でも――」 そこで言葉を切った。 つかの間の時間。 それでも、今の私たちには必要だった。