「それならとっくの前に笑えてるよ」
「――え?」
しばらく、頭を整理するのに時間がかかった。
伊月の口からは、ときに予想もしない言葉が飛び出す。
「どういうこと? ほんとに?」
「てか、涼と出会ったときから笑えてた。涼がいるときは、いつも本当の笑顔でいれてたよ」
「でもあのとき――」
あのとき、雨の中で初めて伊月と気持ちがぶつかったとき、確かに伊月は『笑えないよ』って言った。
「あのときはな。でもな、涼」
伊月が私の目の前にまわる。
目と目がしっかりぶつかる。
「笑うって、笑おうと思っている時点で笑えないと思うんだ」



