「吹きたい」 自然とその言葉が出ていたのは、今の私にとっては当たり前だった。 あのときの感覚。 今なら、トランペットに潜む影にも勝てる気がした。 だって―― 「伊月がいてくれるのなら」 私は、1人じゃないから。 大切な人が、私のすぐそばにいてくれてるから。 「そう言うと思った」 ニヤリと笑って歩き出す伊月。 もちろん、その笑顔は、白い歯がよく際立っていた。