あぁ。
これは、あのときのだ。
屋上で空に向かって響き渡らせていた、あのとき。
太陽の光を反射して金と銀に輝く楽器。
空に響くきらびやかなトランペット。
気持ちいい風になって舞い上がるフルート。
雲を吹き飛ばしてしまうくらい力強いサックス。
コンクールなんて鎖にとらわれていない、ありのままの私たちの音。
3つの音が重なって、奏であい、協和しあっていく――――。
懐かしい感覚が引き戻される。
これは、伊月のおかげなの?
トランペットの音色。
口に当てたときの冷たさ。
少し鉄臭い金管楽器特有のにおい。
あのときの全てがいとおしい。



