「それにしても、里麻、どこまで話してんの?」 「んーけっこう全部?」 「何それ」 そういって笑う私たち。 伊月の腕を振り解いて、私は前へ歩き出す。 「きこえなくなる前に」 隣に気配がなく、振り向くと、伊月はさっきの場所にたたずんでいた。 「涼のトランペット、きかせて?」 「――でも」 「俺がついてる。だから、大丈夫」 『大丈夫』 伊月の声が頭にこだまする。 それと同時に、いつしかのトランペットの音色もよみがえってきた。