「あと、涼に謝っといてって言われたんだけど……ケンカでもした?」 偽りのない表情の伊月。 クラス違うから、私と里麻のこと、知らないんだ。 「ちょっとね」 「涼がケンカなんて珍しいな。吹奏楽やめたきっかけもケンカではないんだろ?」 ビクッとする。 ケンカではない。 一方的に、私が吹奏楽から逃げただけ。 「そのときのこと思い出してトランペット吹けてないんだろ? 大好きなくせに」 「なんで伊月が知ってる――」 「川浦さんが教えてくれたって言ったろ」 私の言葉を遮って答える伊月。