「――わかったわ」 静かに目を閉じた伊月のお母さんは、ゆっくり自動ドアに向かって歩き出した。 「俺、学校に戻る」 伊月の言葉が聞こえているのか、聞こえていないのかはわからない。 機械的な自動ドアの動く音だけが待合室に響き渡る。 「……母さん、ずっとあぁやって自分のこと攻めてるんだ。俺に音楽させなかったら苦しむこともなかったのにって」 伊月の声が、珍しく震えていた。 私は伊月のお母さんが消えたガラスの自動ドアをじっと見つめていた。