「もう絶対治らないの?」 優花がいすから立ち上がってそう言った。 「今の状態でも奇跡的だって。すぐに聞こえなくなる。治る確率は、ゼロに近い」 冷静に答える伊月を見るのが悲しかった。 ほんとは悲しいくせに。 今にも泣き出しそうな顔してるくせに。 もう、心もボロボロなくせに。 伊月は、自分ひとりで何もかも背負い込んでる。 強がりなだけ。 「バカ」 勝手に動いた口を、伊月は目をまん丸にして見つめた。