「涼?」 私がいすに座ろうとしたとき、あの声がした。 「伊月――」 ゆっくり振り返ると、何事もなかったように伊月がそこに立っていた。 その隣には、伊月のお母さんらしき人物がいる。 「どうしてここに――……」 「伊月っ」 伊月の言葉を聞き終わらないうちに、私は伊月の胸に走っていた。 本当ならその胸に飛び込みたいところだけど、今はできなかった。