いつもの張りがない声に、私は現実を実感した。 本当に、危ない状態なんだ。 もしかしたら、もう二度と伊月に私の声を届くこともないのかもしれない。 「ねぇ、涼。なんで伊月なの? なんで伊月が難聴になっちゃうの?」 「優花……」 「伊月は音楽が生きがいだったんだよ? 神様は意地悪だ」 顔を上げた優花の顔に、涙が伝っていた。 優花と伊月はいとこ。 幼い頃から伊月を知っている存在。 悔しいけど、私よりも伊月の吹奏楽への思い入れが強いことも知ってる。