病院の中は物音一つないくらい静かだった。 今までの街の騒音が嘘みたい。 「優花」 「……涼?」 優花が待合室のところで待っていた。 伊月はいない。 「誰に聞いたの?」 「初めて話した女の子」 「そう」と優花がうつむいた。 その顔に、いつもの笑みはなかった。 「伊月は?」 「診察中。もしかしたら……もしかしたらだけど」 いつもの優花じゃなかった。 最後のほうは声も肩も、小刻みに震えていた。 「もう今度は――完璧に聞こえなくなるかもしれない」