「俺、もう笑えないかもな」 そう言う彼の声のトーンは、少し明るめだった。 でも、表情は声のトーンとは一致していない。 目の前にいる人が、もう笑えないかもって? そんなの、嫌だ。 「そんなこと、言わないでよ」 いつの間にか、私の口から言葉が飛び出していた。 無意識のうちに。 普段なら、初対面の人に話しかけるなんて絶対にありえないのに。 その直後に、能天気なチャイムが鳴った。