「突発性難聴。きいたことあるんじゃない?」 私は静かに頷いた。 『難聴』 ドラマや漫画の世界できいたことがある病名。 そんなの、架空の世界だけでしょ。 少なくとも、私のあまりに現れるわけない――。 そう思っていたのに。 目の前の事実を受け入れることが、容易にできなかった。 それから、伊月は補聴器をセットして、自分にあった出来事を話してくれた。 その話をする瞳が、見ていて切なくなった。