『涼?』 伊月がもう一回私の名前を呼んだ。 強く、ならなきゃ。 「伊月――」 『どうした?』 伊月の優しい声だった。 あのときと、同じ声。 同じ柔らかさを持っていた。 それはまるで、ひびが入った私の心を包み込むベールのようで。