岩本さんは不意に視線を逸らし、そうしてゆっくりと夜空を見上げた。


その横顔は余りに幻想的で、余りに儚げで。



私が目を離せないでいると、

「花火だって、これ一回限りじゃないしね」

静かに呟いて、再びこちらに視線を戻す。



緩やかに弧を描いた口元。優しく細められた目。

だけど、それがどうしても笑顔に見えないのは何故だろう……。



「じゃあ……来年もまた、一緒に見れますか?」

思わず尋ねてしまったけど、その声は消えてしまいそうなぐらい弱々しかった。



「来年のことは、来年になってみないとわからない」

そう答えて、岩本さんは困ったような苦笑を浮かべた。



「そう……ですよね」

無理矢理に同意して、意味もなく漏らした笑い声に、自分自身が虚しくなった。



『来年も一緒に見よう』って。

嘘でもいいから言って欲しかった。


嘘で良かったのに。