「……何か、見た?」
千影くんは、今までにない威圧的な声であたしに問う。
「な、何も見てないし、聞いてません」
「そう……いい子だね」
他言無用、ということだろう。
千影くんの手が、あたしの頭でぽんぽんとバウンドした。
「じゃあね」
そして、あっさりその場を去ろうとする彼。
「あ……」
あたしは思わず。
彼の制服の裾を、つかんでしまった。
「……なに?」
「あ、あの……
け、ケータイとか、ポケベル、持ってる?」
「え?」
話の行方が見えないんだろう。
千影くんは、不思議そうにあたしを見た。
あたしは、勇気をふりしぼる。
なぜかは、わからない。
けど、やっぱり。
放って、おけない。



