「ごめん、つい」


あたしはすぐ、涼介から離れた。


失敗、失敗。


ここには不合格だった子や、希望の役になれなかった子もいる。


実際、悲しくて泣いてしまっている子もいる。


ちょっと、無神経だったな。


ママが、いつも言っている。


この世で一番恐ろしいのは、『嫉妬』だと。


ママも一発当てた時は、大御所演歌歌手の嫉妬の的になり、

色々嫌がらせをされたらしい。


自分から人の恨みを買うことないや……。


大人しく、しとこう。



「なあ、あれ」


「うん?」


「俺、ラウルだ」


「あっ……!」


あたしの名前の下に書かれていたのは、

涼介の名前だった。


クリスティーヌの恋人で、怪人から彼女を守ろうとする、

イケメン子爵の役。


どっちかって言うとアイドル顔の涼介に、ぴったりの役だった。



「良かったね、メインキャストじゃん!」


「なー。しかも、お前の恋人役」


「……!」



掲示板に群がる生徒達の中。


誰にも、わからないように。


涼介は、そっとあたしの手をにぎった。