その日の、放課後。


オーディションの結果が、発表された。


それは、掲示板に大きく貼りだされた。


一番上……。


主役、『ファントム(オペラ座の怪人)』は……



「そ、そんなぁ~……」



それは、涼介の名前じゃ、なかった。


一緒に掲示板を見上げる涼介は、ガックリとうなだれた。



その下。ヒロイン、『クリスティーヌ』は……


壊れそうな心臓を抱え、あたしは顔の前で手を組んだ。


お願い……。


一度まぶたをぎゅっと閉じ、覚悟を決め。


ゆっくりと、開く……。



「ひなた!」



涼介の、明るい声が聞こえた。


あたしの目は、掲示板に釘付けになる。


そこには、間違いなく。



●クリスティーヌ……西村ひなた



と、自分の名前が、油性マジックで書かれていた。



「きゃーっ!!」


「やったな、ひなた!!」



歓喜で、胸が弾けた。


思わずそばにいた涼介に飛びついてしまったあたしを、

他の生徒が冷めた目で見てる。