ダークブラウンの、長い前髪。


長いまつ毛に縁取られた、二重の大きな瞳。


高い鼻の先は丸みを帯びている。


厚めの唇は、少しだけ口角があがっていて……。



多分そんなに高くないけれど、細いせいか、長く見える背。



そう、何故か。



あたしは、彼の姿がはっきりと、見えた。



観客席の一番後ろにいるはずの、彼が……。



そして。



あたしは、彼を知っている。



彼は。彼こそが。



天使、だ。



そう思った。






この日、人生最大の修羅場の幕が上がったことを。


あたしはまだ、知らなかった。