「おかえり、ひなた」
「ただいま」
家に帰ったあたしを出迎えたのは、
いつものお手伝いさんじゃなく、ママだった。
「もー、練習室使えなかったんだから。
オーディション前日くらい、譲ってくれたらいいのに」
久しぶりに家にいたママに、ちょっと甘えたくて。
すねたような口調で言ったら、にやりと笑われた。
「あれ?
女優になるのに、私の力は借りないって大口叩いたのは誰だっけ?」
「うっ……」
「この家は誰が建てたの?
ママよね?
この家の設備があるのは、ママのおかげよね?」
「~~~、もーいいっ!
このドSママめっ!!」
ドカドカと階段を昇っていくと、
下からママの高笑いが聞こえてきた。
それは吹き抜けを通り、あたしの部屋まで響き渡る。
勘弁してよ、ママは歌手なんだから。
声、大きすぎ……。



