「あの…
いつもここで歌っているんですか?」

その丁寧さにリズは思わず敬語になった。


「う~ん。
だいたい週末かな。

あ。もしかして
また来てくれるとか?」


低トーンの甘い声。


リズは思わず聞き入っていた。

「だよな~ぁ~
俺、あんま路上経験なくてさ。
何がダメか、ちょっとダメ出ししてくれないかな?」

真剣な眼差しで、彼はじっとアスファルトを見つめている。

「えっ!!
違いますっ!
歌、めちゃくちゃ
よかったですよっ! 」



「…どんな風に?」


はっと、リズと彼の目線がようやく合った。


「ーーーーっ。」

吸い込まれそうな綺麗な瞳に、リズは戸惑いを隠せず、思わず目を反らした。


「…俺、実はバンドしかやったことなくてさー
今だに苦手なんだよな~。」

彼はサラサラとした前髪をくしゃくしゃと掻いた。