「愛ちゃん…調子悪いなら、
保健室行く?」

愛香の表情を覗き込むようにリズはじっと見つめた。

「いいよっ〜
単なる寝不足だしー」

そう言いながら笑う彼女の笑みには無理があった。


「いいから、行こっ!
あたし着いて行くからっ!
ご飯食べない愛ちゃんは重症なんだから!」


机から離れようとしない愛香を無理矢理引っ張りながら、リズは保健室へと向かった。


「……………。」


静かな渡り廊下に生徒達の声が微かにこだまする。


教室から離れたこの場所は、まるで別世界のように静かだった。


「愛ちゃん…
何か悩みごととかあったら、
あたしに言ってね…」


リズは、ぽつりと呟いた。


「…やだなぁ、そんなのないよ。
ごめん…本当に寝不足でさ…
目を開けたままでも眠れるぐらい眠いだけよ〜」

妙に明るい愛香の声が何故か痛々しいと感じた。

「そう?
なら、放課後までちゃんと眠てよ?
また迎えに行くから」


リズが微笑むと愛香も笑った。

「そんじゃそこらじゃ起きないかもよ〜?」

「大丈夫!
たたき起こすから」

リズと愛香は保健室に向かいながら、くすくすと笑い出した。

「リズ、なんか最近、暴力的だよねー!」

「たくましくなったと言ってよ?愛ちゃん〜」

「いーや、たくましいっていうよりか暴力的だもん、何回、あたし殴られたかっ」

「人聞き悪いよー殴ったじゃなくて、叩いた だから」

「もうどっちでも一緒だよー」


最近、元気ない愛香に喝を入れる為に背中を何回叩いたか…その度、彼女は我に返って普通に振る舞っていた。

その繰り返しだった。