月天使


「そっか…でも、会いたくなったら
言ってね。私、陸の役にたちたいんだ!!」


そう言って、瑠璃愛は俺から離れた。

その言葉がまた胸を締め付けた。



何で言えないんだろう…

何で夏美を忘れていくんだろう。

何で夏美が好きって言えないんだろう…。



胸が苦しくて仕方がない。

ひょっとしたら俺は……。


「好きなのかもしれない…。」


「えっ…?どうしたの!?陸。」


「いや、こっちの話。瑠璃愛、行こっか。」


俺は瑠璃愛の手を引いた。

この胸の鼓動が止まることはないだろう。

俺の心はきっと嘘を知らないから…


「えっ…陸っ手!?」


「ん?何か言ったか!?」


「ううん…何でもないっ。行こっ!!」



なーんてな。本当は分かってるよ。


俺が瑠璃愛と手を繋ぐなんて事するなん

て思わなくて驚いてるんだろ?


俺もだよ…。


瑠璃愛に近づけるのは嬉しいけれど

彼女の存在が大きくなる度に夏美を

忘れていくことが怖い…。



夏美という最愛の人を

消していまいそうで怖いんだ。