月天使


      【夏美side】


「夏美―――っ!!待ってろ、今行くから!!」


―――プツン…


いつもなら私から切る電話も

今日は陸が電話を切った。


屋上での夜空の景色は格別に綺麗だった。

雪は降りやまない。白い息を吐く。


「あっれ~!?電話切れちゃった?
夏美、ついに陸くんと別れなかったね!?」


嫌な顔をした女子生徒のボスが

私の携帯を取り上げる。


私は全学年の女子生徒から陸と付き

合っていることで恨まれていたようだ。


「私は陸が好…」


―――べチンッ…


頬に痛みが走る。

私が何したって言うんだろう…。

何もしてない。ただ陸を愛しただけ。

なのに何で?何で頬が痛むの?


「アハハっ!!あんたが悪いのよ!?さぁ、
今すぐそこから飛び降りて死ね!!」


全学年の女子生徒が嬉しそうに私を見る。


「自殺しろっ!!」


「自殺しろっ!!」


手拍子と共に嫌なコールがかけられた。

私は思ったんだ。陸と別れるくらいなら…

陸と離ればなれになるくらいなら…


「死んだほうがマシよっ!!」


私はバカなんだよ…。ねぇ、陸なら

こんな私を理解できるでしょ?


ごめん…ごめんね…。


―――スゥ…


私は屋上からそのまま

目を閉じて飛び降りた。