『お…奥様!?どうなさいましたか。泣いておられるのですか?』


「ばっ…バカじゃないの!!なっ…泣いてなんてっ…ないわっ…」


『違いますよ…奥様の心です。』


「えっ…?」


『奥様は誰よりも優しい方ですね。』


「どういうことかしら…?」


『奥様の心は嘘をつけないのですよ。この夜桜の雨のように…』


私は電話ごしでフッと笑った。


確かに私は泣いてるのかもしれない。


あの電話の意味が凄く大きな意味に

聞こえてしまって忘れられない。


次、月が帰ってきた時には彼女に

ちゃんと向き合おう…そう思えた。


ねぇ…月、貴方は…


「―愛する人を失った世界に何が見えたの―」


私は夜桜の風を浴びて一人呟いた。

17歳の貴方に今会いたい…


ねぇ、貴方のお母さんとお父さんは

ずっと待ってるのよ…


帰ってきて…。いつか必ず。