夏と秋の間で・甲


「遠慮しときます。」



「失礼な・・・。」



 早月さんから軽い笑みがこぼれる。



 確かに、こう見ると早月さんはとても可愛いと思う。



 でも、やっぱり、車で男の価値を判断する人間はこちらとしても遠慮したい。



「そういう望巳くんこそ、今、付き合ってる彼女とかいないの?」



 いきなり、何を聞いて来るんだ?この女は・・・。



「え?いないよ・・・なんで?」



「いや、なんとなくだけど・・・・いないんだ・・・ってコトはもしかして片思いですか?」



 なんでやねん?



「誰をだよ・・・?」



 あきれて、ため息が望巳の口から漏れる。



 本当に女性はこういう話題が好きだな・・・。



「例えば・・・・奈津とか?」



「はい?」



 思わず、変な声が出た。



 それは、ただの当てずっぽうの意見だったのだろうが、その言葉は望巳を動揺させるのには十分だった。



 油断していたら、確実に墓穴を掘ってしまっていただろう。