夏と秋の間で・甲

「ごめんね、斉藤君つきあわせて。」



 学校の近くには、赤塚学園生徒の溜まり場とも言えるお好み焼き屋がある。



 鳳仙と言うちょっと変わった苗字の主人が経営している店だ。



 望巳と大場さんが放課後に行ったのは、そのお店だった。



「大丈夫だよ、どうせ俺暇しているし・・・。」



 帰宅部、得にしているバイト無し・・・。



 正直、自分でも青春を無駄に使っていると思う。



「フフフ・・・まぁ食べてよ。」



 お好み焼きを綺麗に焼きながら大場さんが笑う。



 お好み焼きなんて庶民的な食べ物の代表格なのに、彼女が焼いているだけで別世界の食べ物に感じるから不思議だ。



 DX鳳仙スペシャル。



 先祖秘伝の秘密の粉にえびタマ、ねぎ、豚等、オーソドックスな具を乗せ、門外秘密の秘伝のタレをかければ出来上がり。



 他では食べることのできないまろやかな味わい。



 これが500円の低価格なのは、学生にとってありがたい。