夏と秋の間で・甲

 夕日が当たり一面を覆いつくすような、夕方。



 望巳と大場さんは、二人並んで駅に向かって歩いていく。



「あ~あ。」



 不意に、大場さんが声を上げた。



「どうしたの?」



「ううん。・・・・ねぇ、斉藤君。斉藤君って、タバコ吸っているでしょ?」



 予想外の質問。



「え?うん。」



 あまり、隠す必要がないと判断して正直に答える。



「私にも一本ちょうだい。」



 意外な言葉だった。



「え?」



 思わず、変な声が漏れる。



「それとも、私なんかには貴重なタバコはあげられない?」



「いや・・・そんなことはないけど・・・。」



 そんな言い方されたら、渡さないわけにはいかない。



 望巳は、ポケットからタバコを取り出すと、大場さんの口にくわえさせて、火をつけた。