「・・・・私さ、さっき先輩に誘われたんだ。」



「え?」



 亜紀の唐突な言葉に、望巳から変な声が漏れる。



「この後、二人で話したいことがあるんだって・・・。」



 それがなんであるのか、考えなくても分かる。



「・・・・どうするんだ?」



「とりあえず、付き合うつもり。奢ってもらった恩もあるし、今日は、そのために遊園地に来たんだしね・・・。」



 自分の口から出てくる紫煙を眺めるように、顔を真上に上げる亜紀。



 元をたどれば、今日の遊園地は早川先輩の我侭なのだ。



 すっかり、そんなこと頭から抜けていた。



「・・・・先輩は、どうするつもりなんだろうな?」



 心から思う。



「そんなこと、私たちが考えても仕方ないよ・・・。でも、私は、私のせいで誰かが傷つくのは、イヤかな・・・・。」



 亜紀の声は、どこか寂しげだった。



「それは、無理だろう・・・・。もう、こんな状況じゃな・・・・。」



 亜紀の言葉は果てしない理想だということぐらい分かる。



 17年しか生きていない人生でも分かることはある。



 人は、誰も傷つけずに、生きることなんて不可能なのだ・・・。