「まぁ、色々あったんだよ・・・。今度、じっくり話してやる。」



 それだけ言うと、早川先輩はこれ以上何も聞くなといわんばかりに、早月さんの家から去って行く。



 絶望が望巳を襲う。



 ・・・・・・これは・・・夢・・・?



 少なくとも、現実であってほしくない・・・。



 いつの間にか、望巳の右手は力いっぱい握られていた。



 かみ締めた奥歯からは血がにじみ出ていた。



 後は、この拳を振り上げるだけ・・・・。



 しかし・・・・・・・・それでも・・・・。



 ・・・・ギリギリで理性が・・・・それを止めた・・・。



 いや、正確には勇気がなかったのだろう。



 土壇場でびびった。



 早月さんの家の前、自分の家の前、相手は先輩、早月さんが見ている。



 ・・・・・なさけねぇ・・・・・・・・・・・・・・。