夏と秋の間で・甲

「意外だな。太刀魚さん、タバコ吸うんだ?」



「ソレを言ったら、斉藤君だって・・・・。」



「俺の場合、意外ではないと思うぞ・・・・。」



「そうだね、斉藤君、悪そうだモン。」



「失礼な。」



 不思議と笑みが沸いた。



 先ほどまで失恋のショックで、泣きそうだったものがすっかり抜け落ちるかのようだった。



 それから二人で、すごく他愛もない会話をしているのを覚えている。



 タバコのこと、最近見たアニメのこと、受験のこと、親のこと・・・・・。



 そして、最後に・・・。



「ところで、斉藤君・・・。」



「あ、その斉藤君って言うの、やめようよ。」



「え?」



「望巳でいいよ。他の連中も俺のことそう呼ぶしさ・・・。何か、斉藤君って呼ばれると、俺じゃないみたい・・・・。」



「のぞみ・・・?」



 生まれて初めて、男性を名前で呼んだ。



 しかも、呼び捨て・・・・。