「コウ」

 肌に馴染んだ声が、俺を呼ぶ。

 寝転んだまま見上げると、しよりがすとん、としゃがみ込んできた。

「母さんが、『お茶でもいかが?』って」

「さんきゅ」

 風がいつのまにか、夜の湿り気をおびている。

 ――本日も、なにもせずに開店休業中か。

 そんなカウントを入れながら、身体を起こす。

 そんな俺の一挙一投足を、しよりが、もの問いたげに見つめていた。