蝉の鳴き声が、絶え間なく降ってくる。

 鬱屈していても、暑いものは暑い。

 正確に云うなら、ハンパに悩む自分の隣りに、二重写しで、暑い暑いとふてくされる自分がいる感じだ。

 むきだしの手足にも、暑さ相応に、うっすらと汗が滲む。

 耐え切れず、俺はずりずりと、寝転んだまま窓に手を伸ばした。

 いまどき木製のサッシにはまったガラスを指先でひっかけると、澱んだ部屋にゆるい風がそよいでくる。

 窓からは、夏の暑さに負けず、大きく枝葉を延ばした樹が見える。

 さやさやとさざめく葉の音、淡く芝生に影を落とす姿は、俺が子供の頃と、全く変わらない。

 変わったのは――伸びすぎた手足とそこに詰まった感情をもてあます、俺ひとりだけ。