「相変わらずお元気そうで」

 俺は溜め息をつき、読みかけの文庫を可哀想な机に伏せる。

 改めて、きりきり眉をつりあげた彼女を見た。

「しより、怖いんだけど」

「怖くしてんのよ、この大ボケ!」

 俺の真っ正直な反応に、さらに彼女―華月(かげつ)しよりが吠えた。

「なんで黙ってるのよ! コウのくせに!」

「アナタ、コウのくせにって…俺もあんたも一体ナニサマ」

「コウのくせに、よ! 文句あるの?」

 しよりはスパッと云いきって、顔をぐいぐい近付けてくる。