午後二時丁度。

 からん、とドアベルが鳴ると、やっぱり意識が傾く。

 現れたのは、うちの学校のものじゃない、古風な詰襟学生服。

 関係ない、とは思う。

 そもそも、こいつが来るのは、俺との交代要員として。

 サッカーだかバスケだか、高校に入学して部活を始めた奴のために、俺は夏場だけ、【Augasta】に雇われた。

 つまり、奴が来れば俺のバイト時間は終了。

 このまま入れ違いにサヨナラすればいい。

 ――そう、思うのだけど。

 Tシャツにハーフパンツ姿の奴は、俺を見るとぎりり、と射殺しそうな目で睨んでくる。

 穂波と同じく、小動物系の顔立ちは、女子なら『かわいい』とでも騒ぎそうな整い方。

 くるくるとした柔らかそうな髪も姉と同じなのに、表情と雰囲気が180度違う。いや、本当は同じなのにバカ力で、ねじ曲げている感じ。

 奴――穂波の弟・海樹(かいじゅ)は、つくづく、大事な姉に近付く俺が、嫌いならしい。

 鬱陶しいような――面白いような。