「はじめまして。辻です。

 いつも穂波が迷惑をかけているでしょう。

 わがままな娘でごめんなさいね。

 育て方は全然間違っていないんだけど、むやみにこんなになっちゃって」

 すっ、と自然に差し出された手。

 『握手』の意味だと気付くにはちょっと時間が必要だった。

「どうも」

 もごもご、挨拶めいたものを慌てて呟く。

 握り返した手は、穂波と同じに乾いて、冷たかった。

「穂波サンの、お母サン?」

「ええ」

 にっこりと、彼女は微笑みを深める。

「ココ、あたしんちなんです」

 穂波が、どこか誇らしげに云う。

「……なるほど」

 なにが『なるほど』なのか、自分でも意味不明。